超法規的殺害4件で警官らを起訴 麻薬戦争関連で司法相発表
ゲバラ司法相は当局が違法な麻薬捜査中の殺害と認めた52件のうち、4件を起訴したと発表
ゲバラ司法相は25日、現政権下の麻薬撲滅政策(麻薬戦争)で発生したとされる「超法規的殺害」問題について、再調査によって違法に容疑者を殺害したと判断した52件のうち、4件の起訴状を裁判所にすでに提出したと発表した。麻薬戦争をめぐる超法規的殺害事件で捜査側の警官らの起訴が正式に発表されたのは初めてとみられる。26日付英字紙スターが報じた。
今回起訴されたのは①2017年に発生したフィリピン大の学生カール・アルナイスさん殺害事件(首都圏ナボタス地裁)②2018年のグレン・チョン弁護士の秘書、リチャード・サンティリャンさんと友人のジェッサミン・カシンさん殺害事件(リサール州カインタ地裁)③2016年のアンワル・サワジャアンさん、ノエル・バカルソさん、アンヘロ・ホフェルさん殺害事件(北サンボアンガ地裁)④同年のシャリフ・アマトンディンさん殺害事件(ラグナ州サンペドロ地裁)――の4件。
なかでも殺害当時19歳だったアルナイスさんの殺害事件は、政府の麻薬撲滅政策への非難を巻き起こしたことで知られる。
ゲバラ司法相は被告となる警察官らの名前は伏せたが、司法省の報告書によると、麻薬捜査中に違法に容疑者を殺害したとされる警官は150人以上に上る。
司法省が昨年作成した再調査報告書は、さらなる調査と立件のため国家捜査局(NBI)に提出されている。それを受けNBIは1月4日に進捗報告書を出したが、52件のうち「まだほとんどはNBI地域本部によって調査中」との報告だった。
ゲバラ司法相は「複数の地域にまたがるため、NBIの最終報告に締め切りは設定していない」と立件に時間がかかることに理解を求めながら、NBIは「月次報告書で進捗状況を報告することになっている。調査を加速するようNBIに指示を出している。またカルロス国家警察(PNP)長官とも話し、PNP地域本部の協力を取り付けている」と説明した。
司法相は2020年6月に国連人権委員会で麻薬捜査中の殺害事件に関する再調査の意志を表明。21年9月に国際刑事裁判所(ICC)が本格捜査を宣言した後、大統領は再調査開始を命令した。比政府はその段階で判明した51件の不当殺害を認める一方でICCに捜査の中止を要請。それを受けICCは昨年11月から捜査を一時中断しているが、人権団体は「国内では本当の調査は行われない」と主張し、ICCに捜査の再開を要求している。(竹下友章)