ワクチン接種いまだ進まず 大型接種会場を確保へ
ワクチン接種が進まない状況にボン・ゴー上院が政府に接種スピードを上げるよう要求
ボン・ゴー上院議員はこのほど、政府が目標としている年内までの集団免疫の獲得を実現するため「政府はさらにコロナワクチンの接種スピードを上げるべきだ」と進言
した。15日に出演したラジオ番組でのインタビューに答えた。国内でワクチン接種を受けた人がまだ260万人ほどという状況に、ドゥテルテ大統領の側近中の側近である同議員もいらだちを隠せないようだ。
17日付英字紙マニラタイムズによると、上院の健康・人口統計学委員会の委員長も務めるゴー上院議員は「政府が目標としている集団免疫を獲得するためには、9月までに全国民の最低50%に、年末までに70%に接種しなければならない」と改めて目標値を強調、優先接種順位や接種方法などの手続きを守るよう国民に呼びかけた。同議員は「(接種が進む)イスラエルではもう人々はマスクも付けていない。トンネルの先には明かりがある」とコロナ禍を乗り越えれば希望があることを強調した。
同議員によると、現在、国内にはワクチン接種会場が3千カ所以上あり、コロナワクチンも全国に650万回分が在庫として保管されている。ケソン市やパラニャーケ市などはモール・オブ・アジア(MOA)などシューマート(SM)系の巨大モール、大型催事会場を接種会場として整備中で、首都圏の各自治体も大量接種体制を整えて、一気に接種を進めたい意向だ。ワクチン接種にはカトリック教会も協力しており、教会内を接種会場に提供している所もある。
ワクチンの購入契約と納入もようやく進み始めた。6月末までの中国シノバック製や英アストラゼネカ製などのワクチン総在庫量は2180万回分になる予定で、政府は現在、さらにファイザー社とバイオテック社が開発したワクチン4千万回分を調達する契約も進めている。集団免疫を獲得するためには接種スピードを上げると同時に在庫のワクチン保管でロスを減らすことも重要だとされている。
ビナイ上院議員はこのほど、南コタバト州マキララ町で停電のため冷蔵庫で保管していた中国製ワクチン348回分が使えなくなったという報道を例にあげ、停電や台風などの非常時におけるワクチン保管方法に関するチェックリストを作成してワクチンの無駄な廃棄処分を減らすよう求めている。
ケソン州リアル町ではワクチンを運搬していたバンカボートがコンクリートの杭と衝突し沈没して貴重なワクチンが水没寸前となった事故も起きている。今後、雨期入りして台風シーズンがやってくれば、ワクチンの地方への運搬や保管というロジスティックス分野での課題がいよいよ大きくのしかかってくることになり、政府のワクチン接種事業も来月以降に正念場を迎えることになりそうだ。(澤田公伸)