「日刊まにら新聞」ウェブ

1992年にマニラで創刊した「日刊まにら新聞」のウェブサイトです。フィリピン発のニュースを毎日配信しています。

マニラ
29度-24度
両替レート
1万円=P3,700
$100=P5825

2月12日のまにら新聞から

地熱発電世界一目指す 需要急増のインドネシア

[ 1253字|2017.2.12|社会 (society)|アジア発 ]

 火山大国インドネシアが、地熱発電の拡大計画を進めている。経済成長に伴い急増する電力需要に対応するためで、将来的には発電量で世界一を目指す。課題は開発に必要となる多額の費用で、外国からの投資を積極的に誘致したい考えだ。

 うっそうとした森林のあちこちで、地下からの水蒸気がもうもうと湧き上がる。西ジャワ州カモジャン。植民地支配していたオランダが1920年代に発見した地熱地帯だ。その一角で、計23万5千キロワットの地熱発電施設を国営石油会社プルタミナが運営している。

 周辺にはワシの保護区もあり、プルタミナ地熱エネルギー社のアディ報道担当者は「自然から生み出される環境に優しい発電だ」と強調する。

 エネルギー・鉱物資源省によると、インドネシアの2015年の電源構成は、石炭や石油、ガスによる火力発電が全体の95%を占め、地熱発電など再生可能エネルギーは5%。だが同国の潜在的な地熱の量は2800万キロワットと世界最大で、18年に200万キロワット超、21年に世界一となる350万キロワット超の発電を目指している。50年には再生可能エネルギーの比率を30%強まで引き上げる目標だ。

 問題となるのは、発電の可否を見極めるための試掘などに多額の費用がかかること。1回の試掘で800万〜1千万ドル(約9億〜11億円)かかり、建設費用は石炭火力発電所が千キロワット当たり200万ドルで、地熱発電所はその2倍以上。工期も石炭火力発電所が約2年、試掘が必要な地熱発電所は5〜7年かかるという。

 日本政府関係者は「インドネシア政府はまず、建設費用が比較的安価で工期も短い石炭火力発電所の建設で需要を賄う狙いだ」と指摘する。

 日本の企業や政府系金融機関は石炭火力発電所の建設計画に一部参画している。環境団体は「環境に悪影響を及ぼす石炭火力発電事業から欧米の銀行が撤退する中、日本の支援が突出している」と批判しているが、日本政府関係者は「日本の官民もいずれは地熱発電支援へと推移していくだろう」との見方を示す。

 エネルギー・鉱物資源省のユヌス地熱発電局長は、東京電力福島第1原発事故などを踏まえ「原発による発電は最後の手段。二酸化炭素(CO2)排出量も抑えられる地熱発電こそがインドネシアの選択」と強調。政府による電力買い取り制度などの優遇策も検討しているといい、日本を含む外国からの投資を呼び掛けた。

インドネシアのエネルギー

 経済成長に伴う電力需要の増加に対応するため、政府は2019年までに3500万キロワットの電源を開発することを目標に掲げる。石炭や石油による火力発電が現在は主流だが、ランニングコストがかからず環境にも配慮した地熱発電を柱に据える中長期的な政策を進めている。18年にフィリピン、21年に米国を上回る世界最大規模の地熱発電にすることを目指す。エネルギー・鉱物資源省によると、現在稼働中の地熱発電所は10カ所で、発電能力は計約164万キロワット。(カモジャン共同)

社会 (society)