ハロハロ
[ 441字|2016.5.9|社会 (society)|ハロハロ ]
その日本人男性(68)と知り合ったのは、フィリピンで記者稼業を始めた約20年前。確か、在比日本大使館の査証発給に関する取材を進める中、いろいろな情報をもらった記憶がある。その後、音信が何度か途絶えたが、2015年12月、久しぶりに再会した。ほぼ10年ぶり。人懐っこい笑顔は相変わらずだった。
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際どい状況を切り抜けてきたようで、何度か名前を変えた。日本食店などで一緒になり、昔の名前で呼ぶと、「今は〇〇ですから…?…?」と小声で注意されることもあった。12月に会った際、「新しい商売を始めたのでよろしく」と差し出した名刺も、手書きの漢字名は旧姓、ローマ字は「第3の姓」だった。
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聞けば、新商売は「日本人の葬儀手配など」。死亡情報がいち早く入るよう、警察などに当たりを付けたとのことだったが、3カ月後に届いたのは知人自身の訃報。最期をみとった比人によると、随分前から心臓の調子が悪かったという。新商売もうまくいかず、人様の葬儀の世話をする前に逝ってしまった。(酒)