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5月18日のまにら新聞から

職場での安全確保を 大規模工場火災

[ 747字|2015.5.18|社会 (society)|新聞論調 ]

 1年前の5月、首都圏パサイ市で起きた家電量販店倉庫の火災で、女性8人が命を落とした。2階建ての倉庫を火災が襲った時、外から鍵をかけられた部屋にいた女性たちは閉じ込められたまま、逃げることができなかった。家電量販店の経営者は、女性たちがいた部屋に施錠をしていたことを否定した。

 13日、首都圏バレンスエラ市にあるサンダル工場で起きた大規模な火災で、従業員ら60人以上が死亡した。行方不明者はだれ1人として、今回の地獄のような火災から生き延びることができなかったと市の消防局担当者は証言している。

 今回の大規模な火災は、工場1階の扉の溶接工事が原因となって発生している。発生の直後、従業員は工場内の後方にある扉から避難しようとしたが、出口がふさがれ、脱出することができなかった。

 今回の大惨事は、ミンダナオ地方ブトゥアン市の商業施設で発生し、17人の従業員が死亡した火災事故よりも多くの犠牲者を生む結果となった。このときは火災発生時には多くの従業員が眠っていたが、パサイ市の家電量販店の火災であったような施錠の問題はなく、非常口から避難して命拾いをした従業員も多くいた。

 パサイ市の家電量販店のように、防災に対する設計基準や安全基準を無視した商業施設、低賃金や労働環境の劣悪な工場が後を絶たない。こうした惨事が報道される一方で、劣悪な環境でも、賄い付きの食事や寮施設が付いている仕事を必要とする人たちの目には、工場などでの仕事は魅力的に映る。

 残念ながら、工場の劣悪な労働条件に世間の注目が集まるのは、こうした大惨事が起こった時のみのようだ。せめてその時くらいは経営者は、従業員の命を預かっているという自らの責任について、あらためて考え直さなければならない。(スター・14日)

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