ハロハロ
クリスマスの朝、首都圏の教会の洗礼式でニノン(代父)役を初めてつとめた。これまでも依頼はあったが、体よく断ってきた。事情を聞くうち、今度ばかりは引き受けざるを得なくなった。生後3カ月になる男の赤ん坊はの母親は未婚で、しかも自分の子ではない。中退した大学時代の親友が、産後の肥立ちが悪く亡くなった際、彼女宛てに「自分の子と思い育てて」との遺言を残したのだとか。
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当人は教会での式は不要と言い張ったらしいが、両親から説得されたようだ。彼女が子どもの頃から教会嫌いで、家族や親戚から「問題児」扱いされてきた、とは聞いていた。教会での洗礼式は簡素に執り行われ、その後、近くの自宅で酒と料理がふるまわれた。糖尿病がもとで、入退院を繰り返しているという元小型機整備士の彼女の父親も談笑の輪に加わった。「私も糖尿病持ちで」と紹介すると、妙に意気投合した。酒もたばこも医者から禁じられているという。「私は気にせず、やってます」とは、さすがに言えなかった。
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赤ん坊の名はKURAという。「休みなし」ほどの意味で、日本人のように「休みなく働いて」との意を込めたらしい。私の古い友人に競馬狂がいて、彼は息子に伝説の名馬シンザンをもじって「新山」と名付けた。後年、「新山」君は命名の由来を知って怒り、なだめるのに苦労したと聞いた。KURAちゃんも迷惑ではないだろうか。(邦)