脱貧困への希望
問われる現政権の手腕
フィリピンの経済成長はそこそこ良好だが、アキノ現政権下における経済政策が包括的に実施されていない実態が再び明るみに出た。民間調査機関、ソーシャル・ウエザー・ステーション(SWS)による直近の調査で、1080万人が自身の家庭を「貧しい」と答えた。貧困でろくな仕事にもありつけない状況にある人々が、それだけ存在するということだ。
回答者の多くは自身の状況を「変わっていない」と答えている。これは悲劇であり、十分な収益を得られるビジネスを始め、まともな仕事に就ける夢を持つことができない人々の心情を代弁した。
マニラ首都圏の生活水準は比国内では最も高く、貧困層が満足に生活するに最低限必要な生活費は、1カ月1万5千ペソだろう。これは主な稼ぎ手が1人いて、もう1人がアルバイトをすれば賄える額だ。
貧困解消のために政府がなすべきことは、雇用の創出である。例えば製造業への税制優遇措置などだ。
一方、地方の生活水準はさらに低く、1カ月1万ペソもあれば最低限の生活は維持できる。子供が働かなくてもよいように、農業の雇用創出も必要だ。
実際問題、貧困層にとっての最大の悲劇は、子供がよからぬ仕事にかり出されることだ。危険にさらされる覚悟で、最低賃金以下の、あるいは無給で働かされることすらある。
現政権の任期終了まで3年を切った今、アキノ大統領は、学者や民間セクターの知恵を借り、短期間で最大限雇用を創出する計画を策定することはできるはずである。1080万人の全員は救えないかもしれないが、半数は現政権終了時に、一筋の光を見出すことが可能だ。あるいは現状維持で、大半の国民を希望のない貧困状態に陥れるかのどちらかだ。(6日・タイムズ)