ごう慢な言葉慎め
漁船銃撃事件の教訓
5月9日、ルソン地方バタネス州沖バリンタン海峡で起きた台湾漁船銃撃事件。良好だった台湾との関係を一気に緊張させた事件から、われわれが学ぶべき教訓がある。その一つは、政府の報道官は常に注意深い発言を心掛け、相手の怒りをあおるようなごう慢な言葉は厳に慎むべき、ということだろう。例えば、ラシエルダ大統領報道官。事件直後の記者会見で、対比制裁に踏み切ろうとした馬英九総統を「事件を利用して、自身の人気を高めようとしているのではないか」と批判しただけでなく、「私の知る限り、われわれの大統領は高支持率を維持している」とアキノ大統領の「優位性」を強調してみせた。
政府の報道官は、このような不用意な発言を避けるため、人命にかかわる外交問題が発生した場合の対応を、比外務省の外交官から学んでおくべきだった。また、領海や排他的経済水域(EEZ)の警備に当たる比沿岸警備隊(PCG)や海軍は、外交問題に直結する事件の再発を避けるため、国連海洋法条約をよく勉強すべきだ。
漁船に発砲したPCGや不用意な発言を繰り返した報道官は、台比関係を悪化させただけでなく、比人の生活にも深刻な影を落とした。比人労働者の受け入れ凍結や、比への観光旅行を制限した台湾の制裁により、海外からの送金に依存する同胞や国内観光産業は大きな影響を受けた。
3カ月に及んだ比台の緊張関係は、7日に公表されたPCG隊員10人の訴追勧告を機に、好転しようとしている。翌8日には、アキノ大統領が、死亡した台湾人漁船員の遺族に謝罪するため、特使を台湾へ送った。これらを受け、台湾側は対比制裁を解除する見通しだが、今回の不運な事件を機に、比台関係がさらに深まることを期待する。(9日・マラヤ、エレン・トルデシリャス氏)