「日刊まにら新聞」ウェブ

1992年にマニラで創刊した「日刊まにら新聞」のウェブサイトです。フィリピン発のニュースを毎日配信しています。

マニラ
33度-24度
両替レート
1万円=P3,800
$100=P5870

8月12日のまにら新聞から

警察による司法妨害

[ 720字|2013.8.12|社会 (society)|新聞論調 ]

爆発現場での「清掃」

 ミンダナオ地方東ミサミス州カガヤンデオロ市に続いて、マギンダナオ州コタバト市でも爆発事件が起きた。カガヤンデオロ市の事件は7月26日の発生から2週間が経過した今も未解決なわけだが、その理由は国家警察による「司法に対する妨害行為」、もしくは単なる無能さだろう。

 ご存じの通り、カガヤンデオロ市の事件現場は発生からわずか12時間以内に、警官らによって清掃され、事件前の状態に戻された。悲劇的な被害が出ていなければ、単なる冗談話で終わったかもしれないが、事件では現職州議や医師ら8人の命が奪われ、46人が負傷した。

 さらに、比政府とモロ・イスラム解放戦線(MILF)の和平交渉が大詰めを迎えた状況下で起きた。警官らは事態の重大さを認識し、慎重に初動捜査を行うべきだった。他国で同様の事件が発生した場合、少なくとも数日間、長ければ数カ月間、現場は保存され、公判に耐えられるように、証拠収集や実況見分が繰り返される。

 プリシマ国家警察長官は「清掃前に、証拠収集や現場検証は終わっていた」と担当捜査官らを擁護するが、わずか12時間足らずの捜査では「現場や証拠を意図的に改ざんするための清掃だったのではないか」、もしくは「捜査官は無知かつ無能か」と思わざるを得ない。いずれにしても、司法に対する重大な妨害行為であり、国家警察はその責を厳しく問われるべきだ。

 現場保存が問題になるのは何も今回だけではない。2010年、元警官が首都圏マニラ市で起こした観光バス乗っ取り事件でも、警官らは救急隊員ら関係者だけを現場に入れるという基本中の基本を忘れ、犯人射殺と生存者救出の数分後、現場には報道陣ややじ馬がなだれ込んだ。(7日・インクワイアラー)

新聞論調