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10月29日のまにら新聞から

ハロハロ

[ 561字|2012.10.29|社会 (society)|ハロハロ ]

 マスコミ志望の学生を対象に作文教室を開催するので講師をやれ、と言われて現役時代の1986年だったか、文章読本の類を10冊ばかり乱読した。文豪谷崎潤一郎、川端康成、中村真一郎、野間宏などから新聞社の講座本まで。特筆は、社会主義者、堺利彦の「文章速達法」が意外に面白かったこと。

 極め付きは先日亡くなった丸谷才一の「文章読本」。型から入り模倣しているうちに真の個性が表れる、とか、文章は実生活ではなく虚構である、などという悪たれ口に翻弄された。作家は旧仮名遣い派だが、明治大正時代に比べて伝統を尊ぶ気風が薄れた現代人は、和書漢籍に親しみ、名文を読めと語りかけた上で呪文として「ちょっと気取って書け」と教えている。

 ちょっと気取って書け、という心構えが必要なほどの文章を書く機会はなかなかないが、要は、文を書くには居ずまいを正した「おしゃれ心」が必要ということだろう。丸谷才一といえば16年前、J・ジョイスの「ユリシーズ」新訳(3巻)を出した。すぐ第1巻を買って読み始めたが、浅学の身には高踏にして退屈、読みさしのままだ。「失われた時を求めて」ともども20世紀の2大傑作は手ごわい。個人的好みを言えば、21世紀の快作「1Q84」や「ミレニアム」の方がストーリー性豊かで同時代性もあり、取り付きやすい。(紀)

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