対策不備は明らか
感染症の流行
世界保健機関(WHO)は2009年6月、新型インフルエンザ(H1N1)の世界的大流行を宣言した。当初、豚インフルエンザと呼ばれ、世界が一斉に予防措置をとった。WHOが大流行の終息を宣言した10年8月までに、世界で1万7千人の死者が出た。フィリピン厚生省は死者8人を確認した。
新型インフルエンザの発生以後、わが国の対策は向上しただろうか。首都圏マニラ市で先週、感 染症の大流行を想定した対策訓練が実施され、内外の関係機関の代表約200人が参加した。参加者によると、政府は感染症がもたらす緊急事態への計画を全く策定していない。政府の対応不備は、フィリピンの欠陥として、参加者から指摘された11項目の一つにすぎない。
とりわけ、参加者が強調したのは、公共医療施設を拡充する必要性である。感染症に対応する機関の間で、効果的な連携をとることも不可欠だ。各地域で出す警報も、改善しなければならない。感染症が大流行した場合は、国軍を出動させることができる。しかし、国軍の対応能力について、事前に評価する必要がある。
過去にもインフルエンザが世界で大流行したことは何度もあり、H1N1はその最新版である。世界への旅行が容易となり、疫病もまん延しやすくなった。
その結果、世界は鳥インフルエンザと新型肺炎(SARS)の発生を目の当たりにした。科学の進歩がインフルエンザの大流行を食い止めている。しかし、治療薬が開発されず、今後も何千人もの人が死ぬ恐れがある。
わが国はこれまで、他の国のように、大量死という事態は免れてきた。しかし、それだけで訓練で指摘された提言を無視する理由にはならないだろう。(19日・スター)