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7月9日のまにら新聞から

ハロハロ

[ 643字|2012.7.9|社会 (society)|ハロハロ ]

 「自分の体験を思い出し、心が痛みます」。ベトナム系オーストラリア人女性のダンさん(30)が声を落とし、こうつぶやいた。オーストラリアへ向かう「アサイラムシーカー(難民認定希望者)」たちを乗せた小型船舶がインド洋上で転覆、死者・行方不明者が約100人に上るとのテレビニュースを見た時だった。「誰もが平和で幸せな生活を夢みていたのでしょう」。ダンさんのこの言葉に万感の思いが込められている。

 オーストラリアは「移民大国」。人口2262万人(2011年)は、アングロサクソン系白人が多くを占めるが、その他の国民の元々の「出身国」は実に、約120カ国にも達するという。特に、最近では政情不安の高まる西アジア、中東諸国からの難民がインドネシアを経由、危険を顧みずに船でオーストラリアを目指すケースが増え、今回のような悲劇が繰り返されている。ダンさんの脳裏に子供の時の辛い日々がよみがえった。

 両親に連れられたダンさんがベトナム南部の港から「ボートピープル」として、小型船で南シナ海に出たのは22年前、8歳の時。嵐に流されて香港に漂着後、マレーシアの難民キャンプに送られ、最終的にオーストラリアへの移住が決まった。猛勉強の末に弁護士となったダンさんは、昨年暮れに日本人男性と結婚。今回は夫の両親に「孫」が宿ったのを知らせようと訪日した。「私の幸運をこの子にも分けてあげたい」と、目立ち始めたお腹に手を添えながら表情を緩めた。11月初めに誕生予定の第一子は「娘」だという。(道)

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