密輸増を防げるか
酒・たばこ増税法案
財務省はこのほど、通称「悪行税」とも呼ばれる酒・たばこへの増税法案を国会に提出した。酒・たばこは健康を害するとの理由からだ。喫煙は肺がんや肺気腫、飲酒は肝硬変などの要因になる恐れがある。それ故、税金をかき集めたい政府の格好の標的となる。
酒・たばこの値上げは飲酒・喫煙率を下げて国民の健康被害を防ぎ、さらに政府の歳入が増加すると説明されている。このような主張を誰が批判できようか。
しかし、値上げは必ずしも、依存性のある飲酒・喫煙を防ぐことにはならない。多くの人が禁酒・禁煙を試み、失敗に終わっている。これまで値上げに踏み切った他国の例を見ても、必ずしも飲酒・喫煙率低下につながっていない。
増税は、これまでアイルランド、シンガポール、スウェーデン、米国(ニューヨーク)などで実施されている。これらの国々では、値上げにより密輸が増えるという現象が起きている。
また、たばこ増税は喫煙率を低下させただろうか。大半の国では増税前と同レベルの率を保持しているが、マレーシアでは喫煙率が逆に課税前の43%から55%へ増加した。ニューヨークでは21・6%(2000年)から16・8%(2009年)に低下したが、年間7600万ドル相当のたばこ密輸が行われているとの指摘もある。
確かに酒・たばこ増税は短期的な歳入増加を望めるだろう。しかし、同様の政策を実施した国々はその後、歳入減を経験している。
密輸業者にとって、フィリピンは「楽園」である。島国という地理的問題に加え、人手不足の沿岸警備隊とお粗末な税関が重なれば、惨めな結果になることは目に見えている。(2月29日・インクワイアラー、ニール・クルス氏)