責任認めて謝罪を
バス乗っ取り1年
1年前、首都圏マニラ市リサール公園付近で起きたバス乗っ取り事件の遺族、生存者が香港から来比し、比政府の公式謝罪や補償の実現を訴えた。
これに対し、事件1年を機に発表された大統領報道官の声明は、「事件を問題にするのはもうやめて、前へ進もう」という無神経な内容。さらに、アキノ大統領は「(事件は)1人の人間が起こした。(政府による謝罪は)正しいこととは思わない」と公式謝罪を拒否し、犯人のメンドーサ元警部=射殺=1人が人質8人射殺の責めを負うべきと主張した。
公式謝罪を実現できずに香港へ戻る遺族らに、「前へ進もう」と呼び掛けた比政府の対応は果たして正しかったのだろうか。
1年前の8月23日、われわれはテレビ中継を通して、不手際を重ねる警官隊や政府当局者の姿を目撃した。8人死亡という結果の責めは、メンドーサ元警部ではなく、比政府当局が負うべきであり、大統領の「1人の人間が起こしたこと」という主張は都合の良い責任逃れにすぎない。事件直後から比政府の責任を問い続けている香港特別行政区政府は1年後の現在も、比を「世界で最も危険な国」と位置付けて、渡比を自粛するよう呼び掛けている。
一方、渡航自粛勧告の早期解除と事件で傷ついたイメージの回復を目指す現政権は9月から10月にかけ、香港の政府、メディア関係者を比に招待するという。比側が費用を全額負担し、約1億7千万ペソを費やした国家警察の最新装備や観光客の治安対策をアピールして、自粛勧告の解除につなげたい考えだ。
この「大名旅行」に必要な予算額は明らかにされていないが、もっと安上がりで効果的な方法がある。それは、政府の責任を認めて遺族に謝罪することだ。(26日・スタンダードトゥデー)