ハロハロ
ラマダン(断食月)を乗り切ったイスラム教徒たちの表情は、晴れ晴れとし、どこか自信に満ちている。断食はイスラム教徒に課された5つの義務(他の4つは信仰の告白、毎日の礼拝、喜捨、聖地メッカ巡礼)のひとつ。ラマダン中、同教徒は夜明け(午前5時ごろ)から夜(午後6時ごろ)まで、水、食べ物を一切取らず、満足な食事をできない貧しい者たちの苦しさを体現しながら、自らを高める。それだけに、1カ月(太陰暦)の断食を無事に勤め上げた安ど感と満足感は計り知れずに大きい。
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フィリピンでは今年の断食が9月9日夜に終わった。その2日後の昼近く、マカティ市サルセド・ビレッジ内で約1年半前に知り合ったマレーシア人外交官から久しぶりに電話連絡が入った。「断食月明けの祝いをするから、(自宅に)来ないか」との誘いだった。二つ返事で、同ビレッジ内にある高級コンドミニアムに出向くと、職業柄もあってか、東南アジア域内諸国などからの外交官とその夫人らが多数集まっていた。
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そのうちの1人が薄グレーの上品なクルドゥン(同教徒の女性がかぶるスカーフ)姿のインドネシア人で、在比インドネシア大使館員という夫を紹介された。この大使館員は同国の中でも熱心なイスラム教徒の多い西スマトラ州の出身。当方もジャカルタに同州出身の親友がいることから、直ぐに打ち解け、同州を象徴する美しい湖から初代副大統領を生んだ政治風土などに話の花が咲いた。そうした中、同大使館員が「断食は自身を見つめ直し、同時に心の強さを養う絶好の機会」と、すがすがしい笑顔を浮かべて話してくれたのが印象的だった。(道)