新聞論調
問われる責任−MILFの戦闘参加
憲法の定める民主主義の範ちゅうと国民の支持を条件に、本紙は政府とイスラム急進派、モロ・イスラム解放戦線(MILF)の和平交渉を支持してきた。最高裁が昨年8月に憲法違反と判断した父祖伝来の土地をめぐる覚書問題で、本紙は、手続き上の不備と中身を精査して反対した。だが、MILFとイスラム過激派、アブサヤフを区別し、MILFとの和平交渉継続を訴えてきた。
MILFに反主流派も存在し、アブサヤフとの違いが不明瞭であることも承知していた。MILFと比政府の和平合意が実現した場合、MILF分派問題も相殺されると信じてきた。
しかし、昨年8月の覚書問題の破棄を機に期待はぐらついた。MILF指揮官2人が暴走し、組織指令系統の亀裂を露呈した。巨大組織には多種多様な見方があるだろうが、MILFの和平実現能力にも疑念が生じた。
和平推進派にも広がった疑念は今月13日のミンダナオ地方バシラン州での大規模戦闘で一層深まった。MILFがアブサヤフ掃討作戦を遂行していた海兵隊部隊を襲撃したのだ。国軍の狙いはアブサヤフ最大規模の拠点制圧。しかし、拠点までにMILF支配地域を通過するため、国軍はMILFに事前に通知した。「事前調整」の間にアブサヤフ側の人数は約50人から約200人に急増し、MILF側の襲撃も行われた。国軍側犠牲者23人のうち18人がMILFの襲撃で命を落とした。なぜMILF側に犠牲者10人が出たのかとの問いに、ドロルフィノ西部ミンダナオ司令本部長は「アブサヤフやMILFにアルバイト要員などいない」と答えた。同本部長の発言はMILFへの問いに聞こえる。平和を望むのであれば、MILFはなぜ戦闘を回避しなかったのか。(17日・インクワイアラー)