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4月6日のまにら新聞から

人質救えぬ政府

[ 669字|2009.4.6|社会 (society)|新聞論調 ]

赤十字職員拉致

 拉致事件でまたしても人質が救出でなく、解放された。アロヨ大統領は「残る二人の人質もアブサヤフが解放することを願っている。この解放は国民の祈りの結果である。不法行為には断固とした対策をとる必要性を確認させた」と述べた。しかし、国軍の包囲網解除でイスラム過激派、アブサヤフは人質二人を連れて逃走。大統領の言う「断固とした対策」とは一体どのようなものなのか。

 ローマ法王がアブサヤフに人質解放を呼び掛けるのはいいが、国家元首で国軍最高司令官の大統領が同様の発言をするべきではない。大統領は軍・警察の無能さを国内外にさらしたのだ。

 アブサヤフによる誘拐事件で政府が人質救出を成功させた例は皆無。犯人側が人質を解放して逃走するのが常だ。けが人が出ないのは幸いだが、なぜ政府は人質を救出し、アブサヤフ構成員を逮捕できないのか。大いに疑問が残る。

 昨年のテレビ局員拉致事件でも全員が解放されものの、一人の犯人も逮捕できなかった。おまけに、交渉の仲介役だったスルー州インダナン町の町長らを身代金誘拐容疑で告訴してしまった。二〇〇一年にパラワン州で起きた米国人宣教師らの拉致の事件では、軍が偶然、人質を連れた犯人に遭遇し、宣教師の妻は救出されたが、宣教師は遭遇時の銃撃戦中に命を落とした。

 拉致事件をさらに複雑にするのは、交渉の仲介役に名乗りを上げ、過剰なほど多くの者たちが首を突っ込んでくることだ。政府による対応を難しくすることにも気付いていない。過去の教訓が全く生かされず、同様の事態が繰り返されることだろう。 (4日・トリビューン)

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