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4月6日のまにら新聞から

合法殺人の不合理

[ 691字|2009.4.6|社会 (society)|新聞論調 ]

ダバオ市処刑団

 国内で最も広大なダバオ市で平和の守護者と豪語するドゥテルテ市長の本質を理解するポイントは、建前と本音に違いがないことだ。市長の発言内容は本心であり、誠意に満ちている。市長は二月の市議会で「善良な市民を狙う違法行為をしたり、犯罪組織のメンバーであれば、わたしが市長である限り、合法的な暗殺のターゲットになるだろう」と発言した。市民はこれが口先だけの発言ではないことを知っている。

 ドゥテルテ市長は市政トップの座にあり、そこでの合法的な犯罪者抹殺について話しているのだ。組織的殺人事件については、市長と市関係者は関与を一切否定している。市長らは事件が暴力団同士の抗争によるものだと主張しているが、それが本当ならば、市長が「治安・秩序のモデル」と誇るダバオ市は無秩序な危険地域ということになる。

 アロヨ大統領の元治安対策顧問の市長は「わたしが望むのは(犯罪者に)恐怖がたたき込まれること。間違ったメッセージを送っていれば、謝るが、私は何も間違ってはいない」と市議会で話している。市長は正確なメッセージを送っており、犯罪者も市民も正確に理解している。

 同市の「処刑団」は一九九八年以降、十一年間で犯罪組織の構成員ら八百十四人を殺害したとされる。人権委員会は「地元ぐるみの最も大胆な人権侵害行為」と位置づけ、四月から事件の調査を開始した。デリマ同委員長はその際、「治安維持は大量殺人に値するほどの価値があるのか」と市民に問いかけ、さらに同委員長は「市民たちは大量殺人に恐怖を感じ、証言もできない」と述べた。ドゥテルテ市長の行為が市民に沈黙を強いている。(3日・インクワイアラー)

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