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3月23日のまにら新聞から

ハロハロ

[ 633字|2009.3.23|社会 (society)|ハロハロ ]

 首都圏の南、ラグナ、バタンガス両州にまたがる標高一、一三〇メートルのマキリン。妖精がすむ「伝説の山」として、この国で最も有名な山の一つ。絶世の美女として描かれている妖精は数々の物語になり、この国に残る伝説で最もよく知られる。マキリン山は見る角度によって、山頂近くの輪郭があおむけに横たわる彼女の横顔に似ているといわれている。

 「いかにもこの国の伝説らしい」と思えるのは、妖精の名前がどれもマリア(あるいはマリアン)。人間の男性と恋に落ちたため、神の怒りを買って姿を山に替えられた妖精も同様だ。民間伝承でさえも長年の植民統治でスペイン化したようだ。また、英訳の伝説を読んでのことだが、どれも日本語にすると「昔々」で始まる。求婚者の一人がスペイン人の船長という物語の時代設定は、植民統治末期の一八九〇年代後半。今年から数えても百二十年足らず前にしかならない。

 日本人にとって、「昔々」はどれだけ昔を指すのか。百二十年前はそれに当たらないのではなのか……。念のため辞書で確かめると、「昔昔」は「①はるか昔、遠い昔②昔話の語りはじめのことば」(岩波古語辞典)とあり、具体的な年数はない。そこで「ひと昔」は、と言葉遊びを始めると、「昔は六十六ヶ年とし、中頃は三十三ヶ年、当代は二十一ヶ年とする」(幸若舞曲・元服曾我物語)。「十年ひと昔」は比較的近年のことわざらしい。マキリン伝説が意外な方向に発展し、語彙(ごい)豊かな日本語の楽しさを改めて知った。(濱)

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