ゆがんだ忠誠心
無視された世銀報告書
世界銀行の幹線道路整備事業の入札談合疑惑で渦中にあるホセミゲル氏(アロヨ大統領の夫)について、グチェレス行政監察院長が、「法律を共に学んだ親しい間柄」と発言、同氏をかばう姿勢が明確になった。世銀は調査報告書の中で、談合にかかわった「公人」としてホセミゲル氏と故バーバース元上院議員の名前を挙げている。
同院長は十五カ月前に、報告書の要約を読み、ホセミゲル氏の談合関与を目にしたはず。しかも、世銀関係者は二回にわたり同院長と面会、同氏関与の証拠をさらに提出する意向を示していた。その時点で同院長は大統領夫妻による疑惑を知ったのは明白。
テベス財務長官にも同報告書の要約が渡っており、ホセミゲル氏の談合関与疑惑を分かっていた。同長官もグチェレス院長と同様、大統領夫妻をかばうため、口を閉じ、何らの行動にも出なかった。報告書を手にした二人は事の重大さから、その公表が大統領夫妻の失墜につながる危険性を理解していた。疑惑解明へ何らの手段も講じなかったことは、二人が故意に大統領夫妻をかばったという何よりの証拠。
それどころか、国民の税金と世銀融資を守るべき立場のテベス長官は、言を左右に逃げを打ち、大統領夫妻をかばうため、公金がわいろになるのを見て見ぬふりを続けた。グチェレス院長も「資料、証拠不足」を口実に、報告書を基にした調査を一切行ってこなかった。
談合疑惑で世銀ができるのは業者の入札参加禁止処分がせいぜい。それ故に世銀は今回、調査権を持つ行政監察院に資料を提供、不正入札者・企業および関与者の摘発を期待した。なのに二人は保身とゆがんだ忠誠心から、言語道断にも何らの行動もとらなかったのだ。(2月26日・トリビューン)