新聞論調
不自然な反応
世界銀行の幹線道路網整備事業の入札談合に絡んで、外国人ら十人が世銀調査で、アロヨ大統領の夫ホセミゲル氏への賄賂は不可欠だと証言した。報道が過熱する一方で、ホセミゲル氏側から憤りの声は聞こえてこない。
大統領府はホセミゲル氏をおとしめる政治宣伝と評し、世銀に二年前に報告書提出を要請した。しかし、世銀は報告書を行政監察院と財務長官、公共事業道路省に提出済み。ホセミゲル氏の関与を示唆したとなれば、テベス財務長官はアロヨ大統領に報告書を提出したはずだ。アロヨ夫妻の長年の親友、グチェレス行政監察院長からも報告書を受け取っただろう。
千四百万ドルに及ぶペレス元司法長官の資金洗浄疑惑でも香港などの銀行は資金の流れに関する報告書をアロヨ大統領に提供した。グチェレス院長は長年起訴をちゅうちょし、証拠不十分のまま元長官を公特裁に起訴。公特裁判事は棄却し、判事の一人は後に最高裁判事に任命された。判事の任務はアロヨ夫妻の汚職を熟知した元長官の保護だったわけだ。
与党のサンチャゴ上院議員は経済委員会で、聴聞会開催を強硬に主張。ホセミゲル氏の関与が浮上すると、即座に中止した。証拠がないというのだ。しかし、上院は裁判所ではなく、厳格な証拠は要しない。実際に、同議員は証拠もなくエブダネ公共事業道路長官の辞任を要求した。ホセミゲル氏となれば話は違う。夫の評判は切り裂かれた上に、夫妻と閣僚らの汚職行為が国際的に広まった。しかし、夫妻から憤りの言葉もない。談合疑惑も消滅するとみているのだろう。
そんなことはいつまでも続かないはずだ。(7日・トリビューン)