権利侵害者は誰か
違法占拠住民問題
人権委員会のデリマ委員長が、違法占拠住宅撤去の一時猶予を支持する声明を出した。住宅撤去を進めてきた首都圏開発局(MMDA)の人権侵害についても調査するという。
住居を失う違法占拠住民に同情するのは結構なことだが、土地を違法に占拠された所有者はどうなってもよいのか。同委員長はMMDA職員らが住民の人権を侵害している可能性を指摘する。しかし、土地所有者の権利を侵しているのは違法占拠住民の方であり、職員らは所有者の正当な権利を守るという公僕としての義務を果たしているだけだ。
同委員長は、違法占拠を助長するような声明を出すのではなく、「悪いのは住民側。正当な土地所有権を侵害した違法状態では、居住権などの権利は制限される」と説明すべきだった。
違法占拠住民が立ち退かされる場合、移住先の確保や補償などを国・自治体に義務付けた共和国法第七二七九条(リナ法)も違法占拠問題を悪化させる一要因になっている。
膨張する補償金が国庫を枯渇させるだけでなく、同法を逆手にとって違法占拠を生業(なりわい)とする「プロの違法占拠人」や土地の使用権を勝手に売買して私腹を肥やす「地主」まで現れた。さらには「リナ法のために住民立ち退きは困難」と占拠問題を放置する自治体関係者もいる。
政治も違法占拠を助長している。なぜなら、政治家にとって違法占拠住民は有権者だからだ。選挙のためにバラック撤去をためらうだけでなく、他の選挙区から違法占拠住民を招き入れようとする政治家もいる。目的は言うまでもなく、得票数の「水増し」だ。(8日・インクワイアラー、ニール・クルス氏)