「日刊まにら新聞」ウェブ

1992年にマニラで創刊した「日刊まにら新聞」のウェブサイトです。フィリピン発のニュースを毎日配信しています。

マニラ
30度-24度
両替レート
1万円=P3,730
$100=P5830

7月7日のまにら新聞から

無責任な発言

[ 714字|2008.7.7|社会 (society)|新聞論調 ]

深刻化する物価高

 これまでであれば、経済に関するエルミタ官房長官の発言を「大統領府の明確な立場」とはとらえなかっただろう。しかし、大統領の報道担当という肩書きが新たに加わった以上、「インフレは懸念材料ではない。政府は既に対応策を講じている」との長官発言には、驚いてものが言えない。

 われわれが現在直面しているのは、上昇率二けたというインフレ問題。物価上昇率一〇%とは、食料品、医薬品を購入する金も事欠く状態。同率の二けた上昇で、貧困層は極貧に陥る。インフレの恩恵を受けるのは政府だけ。通貨ペソの価値下落で、国内債務の減少につながるからだ。

 しかし、一般国民にとってインフレは「殺人鬼」でしかない。だから、世界の責任ある政府は、インフレ問題解決に全力を挙げる。大統領府関係者の鈍い頭と冷淡な心にはこの本質への理解・認識が欠如しており、国民は絶望の淵に立たされる。

 官房長官の発言に戻るが、一体どのような対応策を講じているというのか。インフレは家計の支出の半分を占める食料品をはじめ、すべての物価高騰をもたらす。原油価格高騰を抑えるのは難しいにしても、政府がコメなどの食糧増産に取り組むのは可能だ。

 しかし政府は、対応可能である石油製品への付加価値税撤廃を拒否した。それどころか、最近では米国に十日間も滞在するなど、公費の無駄遣いを抑える努力は一向にみられない。

 最大の懸念は、官房長官が「インフレは懸念材料ではない」といった大統領の本音を代弁することだ。任期切れが近づき、大統領は何とか有終の美を飾ろうとしている。大統領の頭の中には成長鈍化への懸念などはない。虚栄心を満たすためなら、自国を食い物にしかねない。(3日・マラヤ)

社会 (society)