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4月30日のまにら新聞から

ハロハロ

[ 543字|2007.4.30|社会 (society)|ハロハロ ]

 米国の大学、バージニアテクで教員、学生ら三十二人の命を奪った銃乱射事件はショックだった。現場から遠くない首都ワシントンに住む孫たちがアジア系移民として迫害されないかと心配した。オーストロネシア(マレー)人系の国で起きる「アモック」も同じ乱心現象で、周囲の人間を理由もなく殺傷し、最後は自分も死ぬ。フィリピンでも二、三年前、警官が乱射事件を起こした。

 韓国では以前、兵隊がよく乱射事件を起こしていた。森鴎外が描いた「阿部一族」の悲劇もすこぶる日本的な「アモック」ともいえる。緊密に組織された共同体から疎外されて絶望し、死の世界で合体しようという衝動が働く。事件を起こした韓国人の若者は米国社会に溶け込めないまま、怨念の対象である大学の秩序を破壊し、死後に「アメリカ人」としてのアイデンティティを獲得しようとした。そう想像する。

 アモックは一種の狂気で往々にしてトランス(忘我)を伴う。悪霊が乗り移ったようになるらしい。だが、悪霊の正体は自分を拒否する共同体の掟(おきて)そのものだろう。掟が怒って自分を罰し、共同体も滅ぼしてしまう。フィリピン庶民の心に何かわかりにくい硬さがあるのは、時にある種の強迫観念、義務感が支配し、個人の感情を封殺するせいかも知れない。(水)

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