ハロハロ
実に二十五年ぶりの邂逅(かいこう)だった。人ごみの中、視界にチラッと入ったその愛らしい姿。それをもう一度見ようと、足を止めた。「間違いない。二十五年前に初めて出会った時と同じ容姿」。そう確信すると同時に尋ねていた。「これ、一キロいくらですか」。
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一目、ならぬ一味ぼれの相手との再会場所は、マカティ市サルセド地区にある
小さなベラスケス公園。ここに毎土曜日、昼を挟んで約七時間にわたって食材を中心に商う市場が立つ。昨年十月、同地区に移ってから土曜市場がやって来るのを楽しみにしている。タイ、インド、フランス、スペインなどの自慢料理店もある中、主婦らに人気なのが、新鮮さを売り物とする野菜・果物店だ。
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インドネシア語で「マンガ・ダウン(木の葉のマンゴー)」と呼ぶこのマンゴーが果物店に小さく品の良い姿を並べていた。通常のマンゴーに比べて三分の一と「小柄」。四半世紀前、同国スマトラ島トバ湖を訪れた際、ひなびた湖畔の村で初めて口にし、それ以来、甘さいっぱいの味が忘れられない。一キロ、約二十個で百五十ペソ。冷蔵庫で冷やしたダウン・マンガを毎朝、トバ湖の絶景を思い出しながら楽しんでいる。(道)