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12月28日のまにら新聞から

2件の解決が抑止力に 背後に詐欺のプロ集団

[ 1246字|2006.12.28|社会 (society)|検証2006 ]

「保険金殺人事件」

保険金殺人の犠牲者、澤田靖亮さんの遺体発見現場を指す 地元住民=2005年12月に南ダバオ州マララグ町で写す

 フィリピンにわざわざ同行して保険金目当てに殺害する事件二件が今年に入って相次いで解決した。いずれも二〇〇五年に発生した凶悪事件で、この年の日本人殺害事件は六件だったが、今年は三件に半減した。三件すべて比人の実行犯容疑者が逮捕・送検され、保険金絡みの殺人はなかった。関係者は二件の犯人逮捕が保険金殺人の「抑止力となったのでは」と分析する。

 日本警察当局が威信をかけて解決に苦闘したのは、①〇五年七月にルソン地方バタンガス州で起きた東京都の油科孝章さん殺害事件②同年十二月にミンダナオ地方ジェネラルサントス市で起きた大阪府の澤田靖亮さん殺害事件︱︱の二件。

 発生当初から比国家警察は共通する一点に注目していた。被害者と行動を共にしていた日本人同僚らの「重要証人」が事件後、相次いで帰国を急いだことだ。比側捜査は重要証言を得られずに難航。「怪しい」という状況証拠だけで逮捕状請求し、油科さん事件では司法当局に却下された。強引な手法だったが、比警察の意欲が目立った。

 二件の類似性は他にも指摘された。被害者に死亡時、七千五百万円(油科さん事件)と一億円(澤田さん事件)の旅行保険が掛けられていたことが発覚したが、保険金受取人に同行者の名前があった。

 日本警察の捜査で、二つの事件に絡むグループは交通事故を偽装して保険金をだまし取る犯歴を持つ「プロの保険金詐欺集団」であることも判明した。

 日本の警視庁は今年一月から十一月の間に六回にわたって比に捜査員を派遣。澤田さん殺害事件を追った大阪府警も競うように同二︱十月にかけて計五回、捜査員を派遣して裏付け捜査を進め、ついに容疑者の逮捕・送検にこぎ着けた。

 この間、警視庁、大阪府警が派遣した捜査員は延べ約六十人と外国で起きた日本人殺害事件では異例の規模。比側に依頼した調書が約束通りに提供されないなどで堂々巡りを繰り返したこともあったが、九月に大阪府警、十月に警視庁がそれぞれ容疑者を殺人容疑で逮捕した。

 逮捕者には比捜査当局が早くから容疑を指摘していた人物が含まれていた。油科さん事件を担当した国家警察サントトマス署捜査官は「重要証人が帰国して事情聴取の道が断たれ、事件解明の意欲が薄れた。日本側との協力が捜査を進展させた」と語る。

 日本警察関係者は「(二件が)日本で大々的に報道された影響は大きい。二件の解決が警鐘となり、抑止力となったのではないか」と話している。

 保険金絡みの殺人事件は確かに半減した。しかし、保険業界関係者からは不気味な話を聞く。日本人がレーザー光線による故意の失明手術や手足切断手術を受けるために来比する。その結果を事故と称して保険金をだまし取るという。同関係者によると、「片目が失明となった場合、死亡時とほぼ同額の傷害保険金が手に入る」という。

 また、高価な宝石やカメラ、パソコンなどが盗難にあったと現地警察に届け出て、「被害証明書」を出してもらって保険金を受け取る手口も後を絶たないという。(藤岡順吉)

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