ハロハロ
一九六〇年代の高度成長期、「新三種の神器」という言葉がもてはやされた。高価なカラーテレビ、クーラー、カー(車)の代名詞だった。約四十年後の二十一世紀に入ってからは、DVDレコーダーと液晶画面などを使った薄型テレビ、デジタルカメラが「デジタル三種の神器」と呼ばれているらしい。
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国際通貨基金(IMF)によると、比国民一人当たりの国内総生産は日本の約三十五分の一。首都圏の最低賃金(一日三百五十ペソ)は東京都(同約五千七百円)の七分の一程度。そんな比の「一般家庭」でも、居間にテレビは当たり前。車を持つ家庭も多い。ここ数年は、デジカメを目にする機会が増えた。
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比国内で普及型テレビは七千ペソ程度。新車は最低レベルでも六十万ペソ。最低賃金に換算すると、テレビは一カ月分、車は五年分という現実離れした数字になる。新神器のある家庭の現実と非現実的な数字を重ね合わせる鍵は海外就労。歴代政権が、幻の神器をもたらす「現代の英雄」とあがめ奉るゆえんだ。(酒)