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9月26日のまにら新聞から

国民的英雄が失業

[ 685字|2005.9.26|社会 (society)|新聞論調 ]

代償の結末

 二〇〇四年七月、イラクでトラック運転手として就労中に武装勢力に誘拐され、政府が平和維持・人道援助部隊の撤退要求などを受け入れて、解放されたアンヘロ・デラクルス氏がこのほど、勤務先のパンパンガ州の砂利運送会社から解雇された。

 去年の同月、同氏がマニラ国際空港で記者団のフラッシュを浴びながら国民的英雄として迎えられたことは記憶に新しい。

 少数の比平和維持部隊の撤退は実際には当時のイラク情勢にほとんど影響を与えなかったはずだ。だが、テロリスト集団の要求に比政府が屈した政治的インパクトは大きく米国は比を連合部隊から除名し、厳しい批判を続けた。わが国は「国民的英雄」のために大変な代償を支払った。

 国民の中には、子供七人の養育のため、治安が極端に悪化していたイラクで危険を恐れず働いていたデラクルス氏をたたえる者も多く、その「凱旋帰国」を歓喜で迎えた。

 解雇後、同氏はアンヘレス市と首都圏を結ぶジプニー路線のアルバイト運転手をしながら、求職中だ。

 国会議員や労働雇用省はデラクルス氏に援助を差し伸べているようだが、彼の解雇理由は明瞭でない。だが、同僚と仕事上でトラブルを起こしたのが原因とみられる。

 理由はどうであれ、国を挙げての解放作戦で救出したわれわれにとって、同氏の現状には失望せざるを得ない。

 帰国した際、飛行機から降り立つデラクルス氏が着用していたシャツの正面には「わたしはフィリピン人」、背中には「労働は尊い」とあった。彼はいま尊ぶものを失った。

 われわれが「英雄」に祭り上げた人物はこんな結末を迎えてしまった。(23日・スタンダードトゥデー)

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