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8月15日のまにら新聞から

広島は希望の指標

[ 686字|2005.8.15|社会 (society)|新聞論調 ]

被爆から60年

 幾千もの太陽から発せられたような閃光(せんこう)。全身が溶けるような火の玉。そして破局を迎えた。原爆の恐怖は詳細に記録されている。皮膚がただれ落ち、気圧の急激な低下で、眼球や内臓が破裂、人々はもはや人間の姿を失った。

 広島の平和記念資料館は一九四五年八月六日の「記憶」であふれている。黒こげの弁当箱、大惨事の瞬間を物語る午前八時十五分で秒針が止まったままの時計。これらは好奇心を満たすのではなく、死と悲劇の衝撃を見学者に植え付ける。

 広島には恥辱と希望が共存している。罪なき人々を襲った地獄に対する怒りと恥辱。この悲劇を礎に世界が核廃棄へと向かうとの希望。広島のメッセージが届くのには時間がかかった。核拡散防止条約に抗し、北朝鮮やイランは核所有に向け各国と交渉している。インド、パキスタンは核開発競争を行ってきた。一方、駅、車両内やショッピングモールなどで、爆弾を破裂させるテロリストも登場した。

 世界は核廃棄に向けて前進してはいない。被爆六十周年記念式典で読み上げられた国連のアナン事務総長は「われわれは引き続き核兵器強大化の時代に生きている」と嘆いた。著名な環境保護団体によると、世界の核兵器は一九四五年以来増え続け、二〇〇二年にその数は二万百九個に達した。国際原子力エネルギー機関は「民族紛争や宗教対立、貧富の格差などを原因とする政情不安が拡散の原因である。核拡散はひとつの徴候であり、状況は悪化し続けている」と警告している。アナン総長は「われわれは皆、被爆者だ。広島を核の荒廃地として埋没させず、希望の指標として存続させよう」と続けた。 (8日・タイムズ)

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