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5月9日のまにら新聞から

沈黙させられる報道

[ 691字|2005.5.9|社会 (society)|新聞論調 ]

記者殺害事件

ニューヨークのジャーナリスト保護委員会(CPJ)が「比はジャーナリストにとって世界で最も危険な国」とらく印を押したことに大統領府が反発した日、ミンダナオ島北サンボアンガ州ディポログ市で帰宅途中のラジオ局員が撃たれて死亡した。

 殺害前、この記者は番組の中で携帯電話の文字メールで脅迫されていると訴えていた。この脅迫メッセージは犯人追及の手がかりになり得たのにだれも犯人逮捕に関心を持たなかった。比がジャーナリストにとって最も危険な国になっているというなら、それは報道関係者を標的にする者が「うまくやれる」と自信を持っているためだ。民主国家に戻った一九八六年以降、約七十人のジャーナリストが殺害。うち二十人余りが最近三年間に殺されている。

 CPJは、イラクのように戦争取材で不慮の死を迎えたのではなく、取材活動に関係して殺されたジャーナリストの数に基づき、比を最も危険な国と名指しした。これに対し、大統領府は「誇張しすぎ。不当だ」と反論、捜査当局がこの深刻な事態を解決すると約束した。

 しかし、権力を持った者たちが正義を妨害しているうちは、事件の解決など望むべくもない。ジャーナリストの殺害事件の大半は政治家や警察官が関与しているとの疑いが濃厚である。証人はこれら権力者を恐れ、事件解決に向けた捜査協力を避ける。ラジオ局員殺害事件では地元署は手がかりをまだ何もつかんでいない。進展具合をみる限り、この事件もこれまでの未解決事件に新たな一件を加えるだけだろう。リストが膨れあがるにつれ、簡単に報道を沈黙させるための方法を見つけた者たちの傲慢さも助長されて行くだろう。(6日・スター)

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