ぬぐえぬ心理的抵抗
国民ID制度法案
国民IDカード制の導入法案が議論となっている。政府はバレンタインデー連続爆破事件の恐怖を契機に再びID制度導入へと動いたが、、国民は爆弾よりID制の方に恐怖を覚えている。個人のプライバシー侵害につながると懸念するからだ。
しかし実はフィリピン人はIDカードが好きだ。国民は普通、選挙登録票や社会保険機構登録票、運転免許証や学校ID、住民票や車両ステッカーなど幾枚も所持している。ドリロン上院議長も、「国民ID制度はこれら相当数のカードに記載されている個人情報を一枚のカードにまとめるだけであり、どこがプライバシーの侵害か」と問うている。
しかし、フィリピン人は国民ID制度に対して心理的にアレルギーを感じているのだ。これは過去の不幸な経験に基づいている。
スペイン統治期にフィリピン人は今でいう住民票にあたる「セドゥラ」の所持を義務付けられた。それは強制労働のバッジでもあり、警備兵の歩哨小屋で提示することになっていた。これへの恨みからボニファシオと秘密結社メンバーたちが蜂起しフィリピン革命を起こした際、群衆の前でセドゥラを破っている。
日本占領期にも国民は住民票の提示を義務付けられ、所持していないと平手打ちされ監獄につながれた。マルコスの戒厳令期も同様なことが起きている。
しかし実際の運用についてもID制度はテロ抑止につながらない。いったいどのテロリストが自分の本名をIDカードに記入するだろうか。偽物も簡単に作れるのだ。もし国民の賛成を得るのであればIDカードを米国移住をイメージさせる緑色にすればどうだろうか?(23日・インクワイアラー、ニール・クルス氏)