ハロハロ
ラジオの深夜放送を聴いていると、司会者が「スイス国籍の青年が車中で出血し動けなくなっているそうだ。誰か助けて」と呼び掛けた。車の所在地とみられるマカティ市サンタアナ地区一帯には、放送をモニターしていたタクシーや野次馬記者の車が多数集結。大渋滞を引き起こしながら深夜の大捜索を続けた。
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途中、携帯電話を介した青年と司会者の会話も実況中継された。「血が止まらない」と息絶え絶えで話し続ける青年。大捜索と中継は翌日未明まで続いたが、結局青年は見つからず。司会者は「(出血に関する)情報はウソだったかもしれない。ただ、比人がいかに優しいかよく分かった」と苦しいコメントをしていた。
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イラク人質事件でも情にもろい比人の特性が遺憾なく発揮された。国際社会の批判を浴びる中で「こういうやり方もある」と武装勢力の要求に屈して見せた。時に不条理な事態を生む「優しさ」を全肯定するわけではないが、同様の事件で人質三人の「自己責任論」が噴出した国との違いを痛感した。 (酒)