外国に未来託すな
大統領の経済運営
日本で小泉首相と会談した際、アロヨ大統領はフィリピン人介護師に対する門戸開放を求めた。しかしこれは失敗だ。大統領が比国内での雇用創出に失敗しているのを告白したに等しいし、大卒者、教師、会計士などを「介護師」という名の「使用人」として日本に輸出するのは、自由貿易協定に名を借りた比人の安売りであり非常に嘆かわしい。
経済学修士の学歴がご自慢の大統領にとって、外貨を獲得できる労働力の輸出はわが国の強みらしい。
だが、労働力の輸出は経済発展の原動力となるはずの人材の流出を招き、逆効果なのは明白だ。アロヨ政権下で比の労働市場は確実に縮小、失業率は一三%にも達した。給与の低い専門職の人材が高いサラリーを求めて、海外での単純労働に甘んじる。大統領は「依存式経済」を求めているにすぎない。
大統領は海外就労者(OFW)からの送金が毎年七十億ドル程度あれば、比経済は安泰と見なし、自身の経済運営のまずさやリーダーシップの欠如に目をつぶっている。
彼女の経済的依存体質は、対外債務が膨らんでいるのにもかかわらず、次期大統領選に向けてさらに借金を増やそうとする姿勢からも容易に見て取れる。
「強い共和国」を連呼する割に、外国援助やOFW頼みで、一度たりとも本気で自国の産業を振興しようとしたことはない。
大統領が進める貿易自由化は厄災だ。仮に比産品が優れていようとも、政府が無策では他国との競争に勝てない。日本との自由貿易協定締結ですべてが解決するわけではない。
大統領は未来の比経済を他国に売り飛ばそうとしているのだ。(14日・トリビューン)