トイレ増設は無意味
首都圏の立ち小便対策
首都圏開発局(MMDA)が幹線通り沿いに設置しているピンク色の男性用トイレはとても目を引く。フェルナンド局長がもし、公衆トイレの設置で不潔な環境が改善すると考えているのなら、それは間違いだ。
もちろん、立ち小便の横行を阻止しようという意図自体は正しいが、都市生活者のあり方について住民が理解していないにもかかわらず、否応なしに都市化が進んでいることが問題なのだ。
所構わず立ち小便をするのは、公共の場でごみをポイ捨てしたり、交通ルールを破るのと同様、反社会的な行為。良い生活環境を維持できるよう住民は社会規範を順守する「上品な」態度が求められているのだ。
先進国では当然視されていることの実行が、わが国のような第三世界では難しい。先進国で経済構造の変化や近代化とともに都市化が進んだのとは対照的に、都市部で新産業が育たないまま、単に地方での経済的行き詰まりから都市部に人口が急速に流れ込んでいるからだ。
その結果、人々は事務職などの「良い職」には就けず、最低賃金が保障されないような仕事をしながら地方の生活様式をそのまま持ち込む。地方ならば人口密度が低いため、残飯を捨てれば肥料になるし、立ち小便も問題ない。
首都圏と面積がほぼ同じシンガポールでは、反社会的行為をなくすため強力なキャンペーンを張る一方、規則に違反すれば厳しい罰則を科して成功した。
立ち小便をやめさせる方法は規律の強化しかない。トイレの増設は意味がない。事実、首都圏六百万人の女性向けの公衆トイレがなくても、女性は戸外で用を足したりしないではないか。(13日・タイムズ)