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11月10日のまにら新聞から

国弱めるゆすり文化

[ 690字|2003.11.10|社会 (society)|新聞論調 ]

社会問題の根元

 マニラ国際空港第3ターミナル建設をめぐり、ドイツ系企業フラポートがアロヨ大統領の顧問弁護士に賄賂を要求されたと世界銀行に異議を申し立てた。しかしこれは比の政治において驚くべきニュースではない。「ゆすり警官(コトン・コップ)」に見られるように、「ゆすり文化」は社会の底辺から政府上層部に及ぶ。

 ゆすりを行うのは右派政治家や政府高官だけでなく、左派武装勢力も同様だ。「革命税」の名の下に金を巻き上げる。哀れなのはまじめなビジネスマンである。木っ端警官から国税局職員、共産党勢力から悪徳弁護士にまでゆすり、たかられる。

 政治にはびこるゆすりは生産活動や商業で価値を生産せずに富を吸い上げるだけの寄生行為であり、ゆすり文化は国家の弱体化の表れだ。

 第3ターミナルのような問題が起きれば、政治は極度の機能不全に陥る。実業家は寄生虫に蝕まれた政府には頼ろうとしない。だからこそフラポートは比の司法当局ではなく世界銀行に訴えたのだ。

 この弱体国家が行き着く先は政治学者ハッチクロフトの指摘した「略奪資本主義」である。「やくざ資本主義」とも換言できる。公共事業でやくざまがいにわいろを要求する弁護士がいる。やくざの方がまだ単純だ。このようなマフィア資本主義こそが国家の分断の原因である。派閥争いで血は流れはしないが、マフィアの抗争と差はない。

 昨今の最高裁をめぐる一連の騒動も結局はある派閥によってでっち上げられた政治劇にすぎない。略奪資本主義の改革は非常に困難である。ゆすり文化は比社会の害毒であり、政治暴力と無秩序、不安定の根元なのだ。(4日・タイムズ、カリクスト・チキャムコ氏)

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