噂に浮き足立つな
反乱首謀者の狙い
国軍兵士による新たなクーデター計画がある、との情報が最近、携帯電話の文字メールやEメールを駆けめぐった。火消し役に回るべきアロヨ大統領自身がダビデ最高裁長官の弾劾発議をめぐり政局を混乱させた。これが金融市場のさらなる混迷を招いて、フィリピンの治安情勢について在比外国大使館に対し説明せねばならない事態となっている。
選挙で選ばれた「正当な大統領」を押しのけ、国軍の支持をバックにアロヨ大統領が憲法を超越する形で政権を握って以来、クーデターに関する噂(うわさ)は真実味を帯びるようになった。大抵の場合、噂は単に願望から引き出されたものであったり、酔っぱらいのたわごとに過ぎない場合が多い。
「現政権打倒」を掲げる勢力がまとまるためには、エル・シャダイやイグレシア・ニ・クリストなどの宗教団体との連携が必要だが、両者ともその動きはない。
前回の反乱騒ぎは一般市民の支持を獲得できなかった。だからといって、その事実が次のクーデターを抑止できるわけではない。政府は反対勢力を懐柔できていないし、第一、大統領自身が国民に平静を呼び掛けること自体「脅威の存在」の宣伝となっている。
次期大統領選まであと半年と迫った。前回の反乱騒ぎ同様の事件が起きたとしても、首謀者のカリスマ性も理論も既に破綻しており、国民は誰も支持しないだろう。だから、クーデターの噂に浮き足立つ必要はない。噂に振り回されることは自らの足に発砲するようなもので、政権基盤や市場を揺るがすことになる。それこそが反乱首謀者の狙いである。(2日・スター)