予算審議を放置
最高裁長官の弾劾騒ぎ
ダビデ最高裁長官の弾劾発議問題をめぐる騒動で、国民は来年度予算が年内に成立するかどうかについて考えることをほとんど忘れてしまっている。思い起こせば、昨年も一昨年も予算案成立が新年度にずれ込んだ。このため、予算審議のための特別国会が招集されるのが常態化してしまい、議員はこれを当然のことと受け止めているようだ。
今回は特別国会が招集される事態は避けられそうだが、それは予算審議が順調なためではなく、まったく別の理由によるものであり事態は深刻である。
最高裁長官に対する弾劾発議は下院で必要とされる三分の一以上の署名を集め、上院への送付を待っている。だが、発議に反対する与党側の意向をくみ取った下院議長が休会を強行したため、予算どころではなくなっているのが実状だ。
フィリピンでは予算成立前に新年度(一月)を迎えると、自動的に前年度予算が適用される。しかしそれでは、新規の急を要する予算が実行できなくなる。これでは国会が本分を全うしているとはいえない。以前は十二月に入って新年度予算が成立していないと大騒ぎになったものだ。
議員が有権者のことを真剣に考えるのならば、予算成立を優先すべきである。
近年、急に予算構造が複雑になったわけではない。予算の三分の一近くは債務払いに充てられているし、残りの八〇%は政府職員の給与や必要経費に割かれているのである。
予算審議に時間がかかる理由などない。国の発展や社会改革などを大言壮語をする前にやることはたくさんある。基本的な義務さえ実行できない議員の何を信じることができようか。(10月31日・マラヤ)