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10月13日のまにら新聞から

アブの恐怖を利用

[ 673字|2003.10.13|社会 (society)|新聞論調 ]

サバの拉致事件と国軍

 マレーシア・サバ州のリゾートで五日夜、フィリピン人とインドネシア人の従業員六人が拉致された事件は、イスラム過激派、アブサヤフへの恐怖を再びかき立てた。二〇〇〇年四月にボルネオ島北東沖のシパダン島で外国人観光客が拉致された事件を思い起こさせ、フィリピン国軍の見込み発表から、アブサヤフの仕業との観測が広まった。

 奇妙なことに、アブサヤフの犯行を指摘したのは比国軍だった。マレーシアの警察は「身代金狙いの自国海賊の犯行」として、外国のグループが関与した可能性を否定。前回事件を踏まえて、「今回襲撃されたのは、主に国内旅行者が宿泊するリゾート」とも付け加えた。しかし国軍南部司令本部のキアムコ本部長は、犯行グループがミンダナオ方面に逃走したのを理由に「(アブサヤフによる犯行の)可能性は捨てきれない」と述べた。マレーシア当局が否定しているのに、比国軍は一足飛びに「国際事件」とほぼ断定した。

 国軍の最高指揮官であるアロヨ大統領は「比人が犯行に関わった可能性は低い」と語った。比側に統一が取れていないのは国軍の意図的な説明不足によるものではなかろうか。

 国軍にとって今回の事件は絶好のタイミングで発生した。予算審議中の国会にアブサヤフの脅威を印象付けることができる。またブッシュ米大統領が来比する直前の新たな脅威発生は、軍事援助を引き出す格好の口実になる。国軍がこれまで何人ものアブサヤフリーダーを拘束したのはウソだったのか。「アブサヤフの恐怖」は経済に悪影響をもたらすが、国軍にとっては「知ったこっちゃない」のである。(6日・インクワイアラー)

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