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9月19日のまにら新聞から

移民1世紀 第3部・新2世の闇と未来

[ 1584字|2003.9.19|社会 (society)|移民1世紀 第3部・新2世の闇と未来 ]

「民間」に依存する支援

ケソン市にある「マリガヤハウス」では新2世の子供たちを対象にした日本語、習字教室なども開かれている

 日本人の父親から捨てられるなどして生活に困窮する「新日系二世」問題は、一九九五年の日比首脳会談で「将来の日比関係に影を落としかねない人権問題」として取り上げられた。しかし、政府レベルの取り組みは、その後ほとんど進んでおらず、民間団体の支援に依存する状態が続いている。首脳会談の前年、九四年から新二世の支援を続けている市民団体「JFC(ジャパニーズ・フィリピーノ・チルドレン)を支えるネットワーク」(阿蘇敏文・山野繁子共同代表、事務局・東京都千代田区)の二〇〇二年度活動報告書などを基に、支援の現状や今後の課題を検証する。

 同ネットワークが過去十年間で受理した相談件数は計六百二十一件(母親の人数)。うち二十四人の新二世が日本国籍を取得し、六十八件の養育費請求が実現した。これら解決ケースの割合は相談全体の一割強。「父親の所在不明」や「支払い拒否」などで、調査打ち切りになったケースは四百二十五件、七割近くを占める。

 日本国籍を取得する上で第一のハードルになるのが、両親が既婚か非婚かという点だ。六百二十一件中、日比いずれかで婚姻が成立していたのは二百五十四件だけ。残り六割近くを占める非婚の場合、この段階で国籍取得の道は事実上閉ざされてしまう。

 婚姻成立ケースから重婚(二十一件)を差し引いた二百三十三件中、比国内で婚姻が成立していたのは二百二件で全体の八割強。このうち、日本の役所に届けられていなかったケースは三割強の六十六件にも上る。

 未届けのまま十五年近く放置されてきた例もあり、報告書は「役所に届け出ない限り(男性の)戸籍には婚姻が記載されない。時間が経過するほど夫の所在地や本籍地を捜すことが難しくなり、子供の日本国籍喪失などにつながる。比政府や日本大使館による周知活動が必要だ」と指摘する。

 また、両親の婚姻が戸籍に記載された「婚内子」にも日本国籍を喪失するケースが多い。比で出生して比国籍を取得後、出生届が三カ月以内に日本側役所に提出されなかったためで、同ネットワークが相談を受け付けた婚内子二百六十七人のほぼ半数、百十八人が日本国籍を失っていた。

 国籍取得は基本的に男性の同意がなくても手続きを進めることが可能だが、認知や養育費請求は同意なしでは実現し得ない。認知を拒否している男性と新二世の親子関係を証明するため、九九年から始めたDNA鑑定は、男性側に血液採取を拒否されるなど難航。また、日本経済の低迷で男性が失業、養育費支払いどころではなくなったケースも増えている。

 一方、日比離婚の増加に伴い、日本で出生後に母と比へ帰国、比国籍を取得しないまま違法滞在を続ける「新二世」も増えている。

 同ネットワークの比現地事務所「マリガヤハウス」には、これまで母親約三十人から子供の違法滞在についての相談が寄せられた。同ハウスが〇二年五月、比外務省や出入国管理局などと協議した結果、「比国籍の認知手続きをすれば違法滞在期間の罰金を免除する」という特例措置が認められたが、一万—一万五千ペソ程度かかる費用や複雑な手続きが壁となり、そのまま違法滞在を続けるケースが多い。

 同ハウスの松本みづほさん(32)が「日本国籍を持った子供が大きくなり、日本就労などのため比から出国しようとした時に初めて違法滞在に気付く」と指摘するように、新二世の違法滞在は今後、顕在化する問題だろう。

 七割に上る調査打ち切り率。数字が物語るように、手間と時間のかかる新二世支援は一筋縄では進まない。日比両国政府も支援の重大性を認識しながら「基本的には民事の問題」と距離を置いているのが現状だ。救済の手がどこからも差し出されない新二世が増え続ける中、養育費請求や子供認知が、母子救済を旗印にした「ビジネス」に発展する可能性さえはらんでいる。(つづく)

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