ハロハロ
[ 400字|2003.8.11|社会 (society)|ハロハロ ]
七月二十七日午後十時前。テレビ画面に満面笑みのアロヨ大統領が映し出された。約十分後、国軍本部に詰め続けた比人記者から短い携帯電話の文字メールが入った。「終わった」と。彼は普通の「貧困家庭」に育った普通のフィリピン人。短いメッセージの向こう側にはやり場のない無力感が漂っていた。
◇
後日、「これで国が変わると思った。軍事政権でもよかったのに……」と心中を明かした比人記者。政府や国軍の腐敗を糾弾した反乱軍のメッセージに心を揺り動かされたのだろう。国軍本部の真っただ中にいながら、ひそかな、しかし強い期待を反乱軍に寄せていたのだ。
◇
期待の背後では、反乱将校の言う「穴の開いた軍靴」と同次元の不満がぐつぐつと音を立てている。海外出稼ぎ以外に社会の階段を上る道に乏しい、そういう閉塞感もある。のど元に突き付けられたあいくちを払いのけ、笑った大統領。いや、問題の根深さに笑うしかなかったのか。(酒)