自警団の容認やめよ
政府の麻薬撲滅対策
「死にたくないのなら覚せい剤を売るのをやめよ」︱︱。タガログ語で書かれた警告文がケソン市内の中流層向け住宅街路上で一日朝、見つかった。かたわらにはテープで目隠しされ、のどを切り裂かれた遺体が三体。覚せい剤密売人を処刑する自警団の犯行だ。
同日朝、同市内の別の住宅地でも男性の胴体が発見された。警察は同じグループの犯行とみている。
同市内では薬物がらみの「処刑」があとをたたない。五月にはバラバラにされた男性二人の遺体が市内四カ所で見つかった。遺体が詰まったごみ袋には「次はお前だ」と書かれた警告文が同封されていたという。
アロヨ政権が麻薬撲滅キャンペーンを掲げて以来、密売人が殺害される件数が増えているようだ。六月三十日にはヌエバエシハ州ガパン市で、密売人リストに名を連ねていた二十一歳の男性が射殺されている。
一連の冷酷な犯罪の背後には複数の自警団が存在すると推測されるが、その筆頭格は共産党系の都市ゲリラ組織、アレックス・ボンカヤオ・ブリゲード(ABB)だろう。ガパン市の射殺事件に先立ち、テレビ番組で処刑者の名前が掲載された密売人リストを公開している。
昨年八月には同部隊の設立者、ペラルタ氏が組織として少なくとも二十人以上を処刑してきたと発表している。問題なのは、同部隊が政府の麻薬撲滅キャンペーンの一翼を担っていることだ。同部隊は二〇〇〇年十二月に政府と和平協定を締結。協定に沿って処刑を実行しているに過ぎないという。
自警団の行為を容認し、犯罪を利用して犯罪を取り締まろうとする政府の政策は誤っている。結果的に未解決の犯罪を増やし、犯罪者を野放しにするだけだ。(4日・インクワイアラー)