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4月27日のまにら新聞から

チョコレート・ヒル

[ 1044字|2003.4.27|社会 (society)|名所探訪 ]

地質学上の記念碑

 国内外の観光客に人気の高いセブ島から南東約七十キロ、高速船に乗って一・五時間にあるボホール島。フィリピンで十番目に大きい面積を持つこの島の中央部には、「チョコレート・ヒル」と呼ばれる丘陵が広がっている。

 島の南西端にある州都タグビララン市から車で北東へ約二時間。チョコレート・ヒルへ向かう途中には、一五九五年に建てられたフィリピン最古のバクラヨン教会や、両岸にやしの木が密生するロボック川がある。うっそうと茂るマホガニーの山道には木もれ日が差し込んでいる。これを過ぎると、円すい形型をした丘がぽつぽつと見えてきた。

 空中観測によると、丘の数は千二百六十八個。そのうち一つの丘の頂上にある展望台から丘陵全体を臨むと、神秘的な景観にしばし時を忘れて見入ってしまった。青く広がる空と果てしなく続くでこぼこした緑色の丘のコントラストが印象深い。この展望台には国内外から多くの観光客が訪れ、丘陵をバックに記念撮影するグループが目立つ。

 チョコレート・ヒルはもともと地元住民の間では、現地語で「丘」を意味する「モト」と呼ばれていた。ところが、一九四〇年代に訪れた米国人が無数に広がる丘の色が茶色だったので、「チョコレート」を連想して命名し、それが定着してしまった。乾季での丘陵の色は茶色だが雨季になると緑色に変わるので、この米国人が雨季に訪れていたら違う名前が付けられていたかもしれない。

 地質学上、この丘陵群は約二百万年前の地殻変動で海底から隆起した石灰岩層が潮流により侵食されてピラミッド型にかたどられたようだ。丘の高さは三十︱五十メートルある。国家地質学委員会は世界的にも類似例が少ないと判断し、「地質学上の記念物」に指定している。

 フィリピンではこのような自然の産物には必ずといっていいほど伝説がつきもの。展望台下にあるレストランで待機していたツアーガイドの女性に聞くと、丘陵にまつわる伝説は二つあると教えてくれた。

「アラゴという名の巨人が人間の女性アロヤに恋をし、結婚式を前日に控えたアロヤを連れ去ったがショック死した。悲しみに暮れて大泣きしたアラゴの涙の粒が丘になった」という恋話と、「二人の巨人が決闘し、お互いに投げ合った石や砂が丘になった」という話が言い伝えられているという。

 この展望台とは別の丘にコテージやレストラン、会議室を備えた宿泊施設がある。フィリピンを代表する観光地のチョコレート・ヒルに一泊してみるのも貴重な体験になるだろう。(栗田珠希)

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