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4月25日のまにら新聞から

移民1世紀 第2部・ダバオで生きる

[ 1414字|2003.4.25|社会 (society)|移民1世紀 第2部・ダバオで生きる ]

日本依存から自立へ

ダバオ日系人会付属小学校の児童に竹細工を教える日本人ボランティア(右端)。今年8月には移民百周年記念式典がダバオでも開催される。顔写真は網代正孝会長

 ダバオの日系人支援を一九九〇年から続けている日本フィリピンボランティア協会(JPVA、本部・東京都調布市)。昨年六月には、ダバオ日系人会の敷地内にミンダナオ国際大を創設、日本の高齢化問題と比の環境・貧困問題をリンクさせ、日比双方の課題に取り組む人材の育成を進めている。同協会の網代正孝会長(64)=浄土真宗延浄寺住職=に今後の支援策や日比関係のあり方について聞いた。

 

 ・一九九〇年代半ばから急増した日系人の日本就労の功罪は

 確かにルーツの明確な(一世の本籍地が判明している)日系人は経済的に豊かになった。その反面、誇りある日系人社会を作り上げるために必要な若い力が地域によってはいなくなったことも事実。私も比国内で若いリーダーを育てようとしたことがあるが、せっかく育てた若者たちはみな日本へ就労に行ってしまい、残っているのは老人と子供だけという地域もある。

 ・リーダー育成の目的は

 日本の会社は決して日系人を助けようとして雇っているわけではなく、都合次第で解雇する。出稼ぎはいつまでも続かない。不安定な日本の企業にへばりついていても情勢はいかようにも変わってしまう。日系人一人一人の生活自立を実現させ、日系人社会を日本依存型から自立型へ変えていくことが大切。ダバオの日系人だけは若い力を温存して日比の新しい関係と誇りある日系人社会を作る原動力になって欲しい。

 ・日系人会、日系人社会を自立型へ移行させる方策は

 高齢化がすごい勢いで進む日本と貧困・環境問題を抱えるフィリピン。両国の弱い部分を日系人会とミンダナオ国際大をハブに相互リンクさせることで、貧困・環境問題の体験学習で日本から大学生を呼んだり、介護ヘルパーを日本へ派遣することが可能になる。学校経営などを通じて財政的自立を実現できれば、日系人会が地域の医療や福祉に貢献して「日系人会ここにあり」と日本へ発信することもできるだろう。

 ・相互リンクの具体的な中身は

 高齢化問題解決の鍵は、介護の問題と同様、生きがいを持てるかどうかという点にある。比に移住するリタイア組が増えているが、単に退職後の二十年を過ごすだけではだめだと思う。ボランティア活動などで「あの人がいたから助かった」と人に認められること。それがあってこそ光り輝く人生を送ることができる。大学の付属機関として「生きがい研究所」を設置し、ボランティア活動などのメニューを提供して生きがい探しの手伝いをしている。介護ヘルパー派遣では、あと五年もたてば介護者が必ず不足する。比人の長所はとにかく明るく、人をハッピーにする方法を知っていること。どこかで(介護者受け入れの)鍵が開くと思うが、その時に比各地の日系人会が人材派遣の拠点になるよう期待している。

 ・日比の新しい関係作りについて

 戦争のあった二十世紀は日比両国にとってとんでもない時代で、日本国内では比というとマイナスのイメージが強い。最近では、日本人男性と比人女性の間に生まれた「新日系人」が生活に困って学業をあきらめざるを得ないような状況もある。しかし、介護ヘルパーの派遣や生きがい提供など癒しの国である比が日本に提供できることはいろいろある。日系人会には日比間の架け橋になり、「比と日系人会が日本の弱い部分を助けますよ」という二十一世紀にふさわしいプラスのメッセージを日本へ送ってもらいたい。(第二部終わり)

社会 (society)