国軍は標的を誤った
MILFとの交戦
国軍によると、ミンダナオ島北コタバト州ピキット町周辺で十一日に始まった国軍とモロ・イスラム解放戦線(MILF)との間の三日間にわたる戦闘で、ゲリラ側が九十七人、国軍側が四人の死者を出した。一方、MILF側の発表によると、ゲリラ側の死者は三十三人、国軍は五十六人に達した。数字の真偽はどうであれ、戦闘が拡大していることは事実だ。
国軍がそもそもMILFのブリオック・コンプレックス基地を奇襲攻撃したのは、身代金目的の誘拐を繰り広げてきたペンタゴン誘拐団がそこでかくまわれていたからだ。国軍将校は「われわれはMILFではなくペンタゴンや爆破テロの犯人を追跡しているにすぎない」と説明している。
もしそうなら、国軍は標的を誤ったことになる。これまでの死亡者にギャング団のメンバーは一人も含まれていないからだ。犯罪者を捕らえるための戦争で、国軍兵士とゲリラが数十人死亡したほか、数千人の避難民が生まれたわけだ。
国軍幹部は、今後二、三日で作戦は終了すると述べている。MILF側がもうこれ以上、誘拐団や犯罪者をかくまっていられないというメッセージを伝えてきているというのだ。
両者ともこの戦争で勝者が決まるとは考えていまい。国軍にとってこれまで軍事力だけで決着がつけられなかった相手だったわけであり、すぐに鎮圧できるとは考えていない。また、MILFも今、イスラム諸国が米軍によるイラク侵略に注目している最中に戦闘を長期間続けることは無理だと考えている。
これ以上、衝突が続くと避難民対策だけで政府にとってかなりの負担となり、誘拐団追及どころではない。政府が戦闘と同時にMILFとの和平交渉を急いでいる理由がここにある。(14日・インクワイアラー)