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アゴンシリヨ博物館

2002/8/4 社会

初めて縫製された国旗

 バタンガス州タアル町に初めてフィリピン共和国の国旗を縫製したフィリピン人女性、マルセラ・M・アゴンシリヨの生家がある。国の文化財に指定された生家は十七世紀の建築物。マルセラの四女の寄贈を受け、一九八〇年から国立歴史研究所管轄の博物館として一般公開されている。

 町の中心にある役場からマルセラの名前が付けられたアゴンシリョ通りを歩いて約五分。右手にスペインの植民地時代の名残をとどめた白塗りの邸宅にたどり着いた。中に入ると、当時三十八歳のマルセラが七歳の娘と国民的英雄ホセ・リサールのめいの三人で国旗を縫っている様子を描いた絵画が出迎えた。

 マルセラの書簡によれば、フィリピン革命の最中であった一八九八年五月、亡命先の香港で最初の一枚が作られた。アゴンシリヨ一家とともに亡命していた革命の最高指導者で初代フィリピン共和国の大統領となったエミリオ・アギナルドが国旗をデザインし、アギナルドの法律顧問だった夫を持つマルセラに製作を依頼した。最高級のシルク(絹)を素材に五日間かけて手縫いしたという。

 アギナルドは仕上がった国旗を手に帰国。同月二十八日、スペイン軍との激戦地の一つだったカビテ州アラパンでの勝利を祝し、この国旗が初めて翻されたと伝えられる。

 百年以上たった今も国民に愛され続けているこの国旗は、左側がフィリピン国民の平等を象徴する白い正三角形。右側の上下に分かれた上部は国民の結束と高潔な熱望を示す青色、下部は国を守るためには流血も恐れない勇気を示す赤色で染められている。

 また、正三角形の真ん中には、スペインからの独立のため立ち上がった最初の八州を示した八本の光線を持つ。自由を象徴した黄色い太陽が、三つの角にはルソン、ビサヤ、ミンダナオの三地方を象徴する三つの黄色い星が描かれている。

 マルセラが祖父から受け継いだこの邸宅では、一九〇六年に屋根と天井が改修された。だが、耐久性と強度が高いナラやモラベの床は当時のままだ。居間には木製の上品なテーブルやいすがあり、アゴンシリヨ一家の肖像画が飾られている。

 博物館には残念ながら、記念すべきオリジナルの国旗は展示されていない。屋敷横の広場にあるマルセラの銅像の後ろに十枚の国旗がはためいているだけだ。

 十四年間、館員をしているシルビア・アルバレスさん(42)は「アギナルドの末えいが保管しているようだ」と説明した。ふに落ちない面持ちでいると、「マルセラの生家を公開していることだけでも史実を広く知ってもらうのに意義深い」と念押しした。

 昨年一年間の来館者数は約一万三千人でその大半が大学生。アルバレスさんら館員が館内を案内したり、簡単な講義を行ってくれる。

 開館時間は午前8時︱正午、午後1︱5時。月曜休館。入館無料。(栗田珠希)

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