政府西フィリピン海国家タスクフォース(NTF-WPS)は14日、記者会見を開き、南シナ海の比最西端領土パグアサ島の沖合で先月、中国民兵船が一時座礁した事故で、周辺のサンゴ礁が被害を受け、被害評価額が1100万ペソに上っているとの調査結果を発表した。同タスクフォースは外務省および司法省と連携しながら、中国政府に損害賠償請求を行うとした。
比沿岸警備隊(PCG)のタリエラ報道官(准将)は同日、「これは中国民兵船がパラシュート型のアンカー(いかり)でサンゴ礁を損傷させたことを比当局が発見した最初の事例だ」と説明。海底には中国船が投棄したパラシュート型アンカーがサンゴ礁に覆いかぶさっており、このまま日光が遮られれば、同サンゴ礁を生息地とする最大6000種の魚類が死滅する危険があるという。政府パラワン持続可能開発協議会(PCSD)、西フィリピン大、比沿岸警備隊(PCG)が 先月17日に実施した水中調査の分析により明らかとなった。
中国船(船首番号16868)は先月7日、悪天候のためにパグアサ島近くに座礁。近くに展開していた中国海警局船(船首番号5102)とも連絡を取っていたが、3時間後に独力で離礁していた。比沿岸警備隊によると、同船が座礁したのはパグアサ島から東に2・6キロメートルにある付属礁(パグアサ礁1)の近くで、同島の領海内。
専門チームの調査によると、サンゴを傷つけたのは船体による接触ではなく、中国船がパラシュート型アンカーを展開し、それを引きずる際にサンゴ礁が損傷を受けた。アンカーは調査時にダイバー6人が除去を試みたが、過大な重量のため断念。現在、約307平方メートルのサンゴ礁への日光が遮断された状態にある。
PCSDの生物学者デラクルス氏は「これ以上のサンゴを損傷させずに除去するには、特殊機材が必要だ」と指摘。調査チームの支援に当たった海洋生物学者のゴンザレス博士は「このサンゴ礁に魚類4000~6000種が生息しており、このままではそれらの魚巣がいなくなる恐れがある」と指摘した。さらに、同アンカーが台風の際に動いてさらにサンゴを損傷させる可能性があり、ナイロンの劣化によりマイクロプラスチック汚染も広がるとした。
タリエラ准将は声明で「この事件はパグアサ島領海内で中国海上民兵と海警局の活動が活発化する中で発生しており、このエリアにおける作戦上の懸念を浮き彫りにしている」と表明した。(竹下友章)