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7月28日のまにら新聞から

ラウニオン植物園

[ 1075字|2002.7.28|社会 (society)|名所探訪 ]

日比を結ぶの木マンゴー

 ルソン島北部ラウニオン州サンフェルナンド市中心部から東に約八キロ。林や畑に囲まれた同市カタクランの田舎道沿いに「市営ラウニオン・ボタニカル・ガーデン」がある。二十ヘクタールの広さを誇る州唯一の植物園だ。園内にある千五百本のマンゴーの木は約三十年前、日本の青年海外協力隊により生態系改善と果樹栽培の技術指導を目的に植えられた。往時の隊員の努力が園内の至る所にたわわに実ったマンゴーから忍ばれる。日本庭園も設けられており、意外な場所に日本とのつながりを見つけた。

 苗木の植え付けは一九七二年から約六年間行われた。果樹栽培担当の協力隊員三人が技術指導に当たったという。

 きっかけとなったのは、国際協力事業団(JICA)フィリピン事務所の中垣長睦(おさむ)現所長の提言だった。七〇年から七四年まで同州で園芸作物の協力隊員として活動していた中垣所長は、森林伐採により生態系が破壊されているのに気付き、当時のゲレロ同州知事に植林活動の必要性を訴えた。

 当時はまだ植林の重要性が十分に認識されていなかったため、食用果実を植えることを薦めた。提言を受け入れた知事は、同市カタクランの州公共用地でのマンゴー栽培を決定した。中垣所長は「果樹栽培の協力隊員に混じって雑草を抜き、栽培を手伝った」と当時を懐かしそうに振り返る。

 マンゴーの木々がすっかり成長した九〇年代半ば、用地は州政府から同市に譲渡された。花や植物好きのマリー・オルテガ現サンフェルナンド市長の働きかけで、九六年に市営植物園としてオープンした。入場料は大人十ペソ、学生五ペソ。年間二、三万人が訪れている。主な訪問客は学生で、格好の遠足地として活用されているようだ。

 園内にはマンゴーのほか、何十種類もの植物が敷地一杯に植えられている。約二十種類の竹類を集めた「バンブー・エリア」、こけなど暗い場所を好む植物類が集まった「シャドー・ガーデン」、ハトや動物が入った小型のおりが並ぶミニ動物園もある。

 市は協力隊員へ謝意を表すため、マンゴーの木に囲まれた「マンゴー道」を設けた。さらに、広さ約六百平方メートルほどの「日本庭園」も開設した。だが、同市在住の邦人、秋永和夫さん(54)は「十分な知識のないフィリピン人が造園したので、石灯籠を白ペンキで塗ってしまった」と苦笑した。当初は、訪れた日本人が庭園を見つけるのに手間取ったほどという。

 現在は在留邦人らのアドバイスで、竹で鳥居を作るなど、それらしく見えるように工夫を重ねている。辺境の地にも、日本とのつながりは脈々と生き続けている。(阿部隼人)

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