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6月10日のまにら新聞から

「上院サーカス」

[ 691字|2002.6.10|社会 (society)|新聞論調 ]

与野党逆転の裏事情

 ジョン・オスメーニャ議員の与党連合離脱で上院の与野党勢力が逆転した。与党は形勢不利とみるや直ちに休会を宣言し、野党は与党抜きで開いた本会議で主要委員会の委員長ポスト独占を決めてしまった。読者の方々は、上院が「サーカスそのもの」と悪口を叩かれ、国民の支持率を落とし続けている理由をもうお分かりだろう。

 オスメーニャ議員くら替えの真意はどこにあるのか。議員本人は「電気料金問題で与党側がラモス元大統領の喚問を拒んだため」と説明しているようだが、それとは別に興味深い事実を三つ、指摘しておきたい。

 一つは、ドリロン議長が議長職にとどまったこと。二つ目は、麻薬横流しなどで巨額の資金を得たとされるラクソン上院議員が、自身の疑惑を調査していた上院委員会の委員長になったこと。三つ目は、マニラ電力経営者と親交のあるセリオ・オスメーニャ議員が各種事業の許認可問題を取り扱う委員会のトップに選ばれたことだ。

 利益誘導型の政治はいつものことだが、野党はこれをカムフラージュするために不在者投票法案を可決して見せた。さらに、国民の冷笑を感じ取ったのか、与野党は時を同じくして「第三者調停」による和解方針さえ打ち出した。

 上院議員は全国の選挙民に選ばれたはずだが、彼らにとって最大の懸案は自己の利益なのだ。政党も例外ではない。この国の政党は政治的な課題や問題ではなく「人」を中心に構成されている。それ故、議員は有権者に何の遠慮もなく政党間をコウモリのように行き交うことができる。今は嵐の中にある上院だが、風がやめばカメラの前で握手をする議員たちの姿がきっと見られることだろう。 (6日・スター)

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