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3月17日のまにら新聞から

ベンゲットのイチゴ園

[ 1060字|2002.3.17|社会 (society)|名所探訪 ]

収穫祭で町おこし

 観光地として有名なルソン島北部のベンゲット州バギオ市に隣接するベンゲット州の州都ラトリニダット町。平均標高千五百メートルの山岳部にあるため、冷涼な気候を利用したイチゴ栽培が盛んで、一大産地となっている。三月には「ストロベリー・フェスティバル(イチゴ祭り)」が催され、同町の「イチゴ園」は観光客でにぎわう。

 イチゴ栽培に最適な気温は摂氏一〇度から二〇度とされる。「フィリピンのサラダボール」と呼ばれるベンゲット地方は温帯性の生鮮野菜や果実の栽培が伝統的に行われてきた。

 首都圏との交通アクセスが比較的良いこともあり、同町はフィリピン有数のイチゴ出荷地となった。町の中心部にある町役場からハルセマ・ナショナル・ハイウエイを北に一キロほど進んだところにイチゴ園が広がっている。

 だが、入り口は見つけにくい。ハイウエイ沿いに「イチゴ園」と書かれた一メートル四方の看板が立てられているだけ。ここから舗装されていない小道に入り、五分ほど歩かねばならない。

 収穫期の十一月から三月までは、農道沿いに二十軒ほどのイチゴや土産物の屋台が並び、週末には一日千人近い観光客が訪れるという。

 イチゴ園の成り立ちは少しユニークだ。元々八ヘクタールの農地はベンゲット州立大学の所有地で、農学部が利用していた。財政難に悩む大学は一九八〇年代から地元農家に農地をリース契約で貸し与え始めた。

 農地管理を担当している同大学の職員アンボ・キスワさん(42)によると、年間のリース料が一平方メートル当たり十ペソという手ごろさもあって、現在約六百戸の農家がここでイチゴ栽培に従事している。

 ワイン、ジャム、イチゴクッキーなどの加工業も年々盛んになっている。これら業者を合わせると約二千人が「イチゴ産業」に関わっていることになるという。

 イチゴ園の屋台には、イチゴワイン、イチゴジャムなどさまざまな特産品が並ぶ。ちなみに摘みたてのイチゴの値段はキロ当たり四十│五十ペソ。首都圏での小売店などでの価格に比べたら四分の一程度だ。

 また、町おこしを狙って十年ほど前から同町ではイチゴ祭りが開かれるようになった。同町役場によると、今年は三月十八日に「イチゴの早摘み競争」や「巨大イチゴケーキ作り」などのイベントが役場前広場で催される。

 同町のケーキ職人がイチゴ三百キロを使い巨大ケーキ作りに挑む。出来上がった直径二メートル、高さ百五十センチのケーキは参加者や観光客に振る舞われるという。イチゴ好きにとっては一度は足を運びたい場所である。(阿倍隼人)

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