軍派遣より裏庭掃除
米軍への協力問題
同時中枢テロに見舞われた米国に同情と連帯の意を表すること自体は何も悪くない。ただし、フィリピン政府は米国の「報復攻撃」に過度にかかわりすぎてはならない。
例えば、国軍を戦地に派遣することは、国をより大きな危機に直面させることを意味する。小さな島にいる山賊さえ追い払うことのできない国軍に、ウサマ・ビンラディン氏の洗練されたテロ・ネットワークに対抗するだけの能力はない。
米国を支援する上で最善の方法は、イスラム過激派、アブサヤフを直ちに掃討し人質を解放することだ。忘れられないうちに、米国人人質を救出し、地に落ちた国軍の名誉を回復した方がいい。自宅の裏庭がテロリスト天国になっているような状態で、「国際貢献のために国軍を派遣する」などというセリフは言ってはならない。
ゲリラ掃討と並んで重要なことは、汚職の撲滅だろう。国からかすめ取った不正蓄財や麻薬密売で得た巨利はテロリズムを育てる。疑惑追及とテロ根絶は同じ意味を持つのだ。
米国との相互防衛に関する取り決めも、今回顕在化した問題の一つだ。国軍と国家警察だけで、テロリストらのフィリピン入国を防ぐことは難しい。また、国軍の現兵力で、化学兵器を使ったテロ攻撃に対抗することは不可能だ。
そこで、米軍基地の再設置案が浮上してくるのだが、果たして米国は「米国の敵」からフィリピンを守ってくれるかどうか。比米は太平洋戦争中も「相互防衛」の関係にあったが、受けた恩恵は平等ではなく、米国の方がはるかに大きかった。
同時テロを契機に不平等な取り決めを再度結ぶのか否か。政府には、自尊心に基づいた思慮深さが求められている。